デジタル録音の基礎知識
現在の音楽制作はデジタル録音が主流ですので、それに関する知識を理解する必要があります。
また、アナログの録音機材は手に入れたくても手に入らない時代になってしまいました。
そうなったからにはそれなりの理由があります。
そのあたりも踏まえて書いてみます。
AD変換とDA変換
私たちの耳に聞こえてくる音は全てアナログです。
このアナログである音をデジタル変換して録音するのがデジタル録音です。
デジタルに変換すると、音声信号が0と1という数字に全て変換されます。
デジタル録音は、この数字を記録します。
アナログからデジタルへの変換の事を「アナログデジタル変換=AD変換」と言います。
AD変換にはPCMという変換方式が使われます。
そして変換されたものをPCMオーディオやPCMデータと言います。(最近は1ビットオーディオという変換方式もある)
ですので、録音と言うより数字の記録と言うほうがいいかもしれません。
この記録されたデータはwavやaiff といった拡張子が付いたファイルになります。
このデータファイルを再生するときは、私たちの耳に聞こえるようにするために、再度アナログに戻す必要があります。
そこで再生時はデジタルからアナログへ変換します。
これがデジタルアナログ変換=DA変換です。
サンプリングレートと量子化ビット数
さて、音声のデジタル化についてもう少し話します。
ちょっと難しい話になりますが、避けては通れないので・・・。
音声をデジタル化するときに、どのくらい細かくデジタル化するかという問題があります。
例えると、「どのくらい細かくパラパラ漫画を描くか」ということです。
細かく描けば描くほど「連続した、繋がった動画」のように見えることは想像できますよね。
実はデジタル音声も同じで、細かくデジタル化されたものほど「連続した、繋がった音声」=「高音質」に聞こえます。
PCM方式では音声をデジタル化するとき「サンプリング(標本化)」と「量子化(quantization)」という2つの段階を経てなされます。
1秒間にどれだけのサンプルを採るかを表す数字を「サンプリングレート」と言い、採ったサンプルをどれくらいの精度で表現するかを表す数字を「量子化ビット数」と言います。
難しい話は置いておいて、「サンプリングレート」という数字と「量子化ビット数」という数字が大きいほど細かくデジタル化でき高音質ということになります。
高音質と言われるCDのサンプリングレートは44.1kHz、量子化ビット数は16bitです。
サンプリングレートと量子化ビット数は録音機材・レコーダーの性能で決まります。
高性能な録音機材・レコーダーでは、サンプリングレート192kHz、量子化ビット数24bitというものもあります。
録音機材・レコーダーを購入するときは、どのくらいのサンプリングレートと量子化ビット数で録音できるのかを確認する必要があります。
また、録音機材・レコーダーにはサンプリングレートと量子化ビット数を設定する箇所が必ずありますので、録音前に忘れずにこれらの設定をする必要があります。
音声をデジタルで扱うメリット
音声をデジタルで扱うと、アナログではできないことができるようになります。
一般の人でも分かるように言うと・・・
- 曲の頭出しができる。
- 圧縮してmp3(wavの約1/10の容量)にして、iPodに数万曲入れられる。
- インターネットで曲をダウンロード購入できたり、世界中に販売できたりする。
- 曲の複製を作るときは、ファイルをコピーするだけでいい。ダビングではないので短時間で複製できる。
- 年月を過ぎても音質が劣化しない。(冒頭の「はじめに」で書いたように20年前のカセットテープはヨレヨレでした。)
音楽制作の観点からすると・・・
- 劣化しないので、何回プレイバックしても音質が落ちることはない。
- 複製が簡単で、バックアップも劣化なしで、短時間で済む。
- Undo機能が使える。(アナログのカセットMTRを使っていたころは、操作を間違えてオーバーダビングしてしまい、最初からやり直しということもあった。)
- 波形編集ができる・・・コピー&ペーストができる、タイミングをずらせるなど様々なことがでる。詳しくは波形編集で話します。
- パソコンに楽器を演奏させられる。・・・MIDIという規格を使う。「打ち込み」というヤツ。
・・・などなど全ては書けませんが、アナログでは考えられないようなことができるのです。
このような理由で音楽制作では音声をデジタルで扱います。